コミュニティをビジネスに活用した成功事例

コンサルしている社長から顧客をコミュニティ化して、ビジネスとして活用できないか?という課題をいただき、調べていたら「ハーレー・ダビットソン・ジャパン」(以下H.D.J)の事例がおもしろいので今回のテーマとします。

 

ハーレー・ダビットソンといえば、今年の6月、欧州連合(EU)による関税を回避するため生産拠点を米国から移転すると発表したことに対して、ドナルド・トランプ米大統領

それを批判したことで話題となりました。

 

そのH.D.Jとは米国「ハーレー・ダビットソン」、世界5位のオートバイメーカーの100%子会社の日本での総代理店的な立場で、ディーラー(販売店)を通して消費者への販売を行っています。

 

そもそも「コミュニティ」は、共同体または地域社会などと訳されます。

そして実際に「ビジネス・コミュニティ」を運営している知人に聞くと、その不可欠な要素は下記となります。

  1. 目的の共有
  2. 定期開催

■H.D.Jのコミュニティとは?

H.D.Jのコミュニティは、全国各地の店舗に「チャプター」と呼ばれる顧客専用のツーリングクラブのことをいいます。各店舗単位でツーリング・プランを立て、定期的にツーリングを楽しみながら、店舗スタッフと顧客、顧客同士が仲良くなる仕組みです。それはハーレーダビットソンというバイクを共通のホビーの中で生まれる「物より思い出」を体感でき、それを共有できる場所でもあります。

 

これによく似ているのが高価格帯の自転車の世界です。多くの専門店が顧客向けのチームを持ち、集団トレーニングやレースの遠征などの活動をしています。これを通じて、店舗側がメカニック、トレーニング、レースなどをサポートする代わりとしてその店舗で、新規の自転車、部品、メンテナンスを暗黙のうちに購入する仕組みとなっています。この「コミュニティ・マーケティング」とも言える体制が確立できると、安いネット販売と競合することなく、価格競争をせずに利益を確保することが可能になります。しかし、自転車の場合はあくまで店舗単位ですが、ハーレーの場合は「H.D.J」⇔「販売店」⇔「顧客」とより強固に組織化されているのが特徴です。

 

さらに、このような組織では「販売店スタッフとお客様」という従来の関係性ではなく「ハーレーのことを教えてくれる先生(スタッフ)と生徒(顧客)」のような側面もあり、コミュニティの連帯感が高まっているともいえます。

 

■コミュニティを活用したマーケティングとは?

現在、顧客は単なる価値の受け手ではなく、価値創造をつくる役割も担います。SNSなどでの情報発信を行い、商品の評価や時に伝道師の役割を果たしています。特に趣味の世界ではよりその傾向は顕著で「顧客コミュニティ」化によるマーケティングが成功しやすい素地があるといえます。その意味でもハーレーは「顧客コミュニティ」の成功例といえます。

 

■ハーレーの今後の課題とは?

大型の存在感のあるハーレーに乗り、革ジャンとサングラスで悠々とチャプターに入り集団で走ることは自己表現できる場所の提供ともいえます。

しかし、このような1969年米国映画「イージーライダー」の世界観は古くなりつつあり、バイク業界全体の課題であるオーナーの高齢化も伴って、今後は大きな戦略の見直しが必要となりそうです。

 

今後電動バイクが主流となる業界の中で、ハーレー社も来年2019年に電動バイクを市場投入すると発表しています。車の基本機能は「走る、曲がる、止まる」なのに対して、これまでのハーレーのプロダクトコンセプトは「Look,Sound,Feel」であり、大きく特長のあるスタイル、独特のエンジン音、乗った時に感じるエンジンの鼓動などを楽しむための乗物です。

 

これからどう電動バイクのハーレーが顧客の満足を得られるかで、これからも大手二輪メーカーとして生き残るのか、それともデジタル化の中でも、一部のマニア層に今でも愛用されているレコード針メーカーのような「残存者利益」(過当競争や収縮傾向にある市場において、競争相手が撤退したあと、生き残った企業のみが市場を独占することで得られる利益)を追求する企業となるのかの分岐点となりそうです。

 

今後ハーレーの「顧客コミュニティ」の課題は、いかに若年層の新規顧客をコミュニティへ入ってもらい満足度を上げることができるかが鍵となりそうです。