ビズリーチはなぜ人材業界への新規参入に成功できたのか?

労働人口の減少で人手不足の中、優秀な人材獲得競争が過熱しているのか、最近テレビCMでよく目にするビズリーチ。彗星の如く現れ新興企業として一気に知名度を上げた感があります。

ビズリーチはなぜ人材業界への新規参入に成功したのかを経営コンサルタントとして、ビジネスモデルの視点で説明します。

 

ビズリーチ社の起業のきっかけとは?

現社長である南壮一郎氏は1976年生まれ、米国大学卒業して外資系投資会社、楽天球団などを経て、転職活動をします。その時に多くのヘッドハンターと出会いますが、そこでのアドバイスがまったく異なります。ヘッドハンターによって提案する業界職種がバラバラで求職者と求人企業のマッチング方法に違和感を覚えます。それが転機となり起業を思い立ち、2007年にビズリーチ社を設立、2009年に最初の商品は管理職・グローバル人材に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」です。

 

主力商品「ビズリーチ」のダイレクト・リクルーティングとは?

 社名と同じ名称である主力商品「ビズリーチ」は高収入層のビジネスパーソンを対象とした求職情報サイトです。「ダイレクト・リクルーティング」――求職者と企業をそれぞれ可視化してお互いが直接インターネット上でアプローチできる仕組みも特徴のひとつです。これにより企業が会員である求職者の経歴書を見て直接メールを送ってスカウトすることが可能となりました。さらに実際にはヘッドハンターも登録することで閲覧でき、求職者へアプローチできます。現在の会員数は100万人、累計利用企業7,200社、登録ヘッドハンター1,800人、求人案件7,800件となっています。

 

現在は「ダイレクト・リクルーティングのビズリーチ」のポジションを獲得していますが人材業界の方の情報によれば、実際にはリクルート社が先行して商品化していたようです。

 

ビズリーチ社がダイレクト・リクルーティングの後発にもかかわらず、これを強調して参入し、現在のポジションを獲得できたのは、先発が大企業でフルラインの求人商品を持つリクルート社だからではないかと考えます。

 

今やリクルート社のサービスは幅広くダイレクト・リクルーティングを競争対抗上全面に打ち出せない状況が生まれてきています。そんな大企業のジレンマを突いた、一点突破は南社長の真骨頂と言えるでしょう。

 

主力商品「ビズリーチ」の常識破りのビジネスモデルとは?

 人材業界の慣習を打ち破る日本初の求職者からの課金が特徴の転職サイトです。

 このビジネス・モデルは米国市場で人材紹介会社「The Ladders.com」がすでに成功していて、南社長が直接「The Ladders.com」の社長と会ってその方法を具体的に聞いてきたそうです。その考え方とは結婚相談会社ビジネスをベンチマークにすることでした。

 

結婚相談会社は男性と女性の両方から料金を取り、お互いにお金を払っているからこそ

真剣に相手とコミュニケーションを取るから満足度が高いと考えました。確かにそう考えると求職者・求人企業を男女に置き換えると両方から課金することが自然に思えてきます。

 

そしてこれまで人材ビジネス業界は、お金をいただく求人企業の満足度に注力していた視点からこのビジネスモデルによって求職者も合わせた両方の満足度を上げる視点をもたらしたともいえます。

 

しかし、「The Ladders.com」を参考にしながら構想し、商品化の前に日本の人材業界の方々に相談したところ、ほとんどがそれはビジネスにならないと否定的だったようです。

 

これは人材業界の巨人であるリクルート社が確立した求人企業から収益で充分にビジネスになっているのに、その慣習を変えること、これまで前例がなく常識破りであることが理解されなかったのが理由のようです。

 

それでも南社長は求職者からの課金を実施したのは、米国まで成功企業の社長まで直接会いに行き具体的方法を聞いて確信を持てたことです。ここに学ぶべき点は南社長の抜群の行動力といえます。

 

現在は無料で使える部分と有料の部分があり、有料の場合求職者からの月額課金料金はタレント会員2,980円(現在の年収が750万円未満)、ハイクラス会員4,980円(現在の年収が750万円以上)とあります。

 

主力商品「ビズリーチ」の成功要因とは?

 この当時なかった会員登録に年収制限を設けてハイクラス求人に特化(参入時750万円を超える日本の給与所得者は13%)したニッチ戦略とダイレクト・リクルーティングを最大のセールスポイントで人材ビジネスに新規参入しました。

 

ダイレクト・リクルーティングの後発企業にもかかわらず、これを強調した大量の広告での一点突破によって、「ダイレクト・リクルーティングのビズリーチ」のポジションを獲得し、同時にブランディングの構築に成功しました。その結果、これまでの業界になかった常識破りの求職者から課金するビジネスモデルも成功しました。

 

ビズリーチ社には豊富な人材のデータベースと質の高いシステム開発力があり、それを活かすため、異分野への進出の可能性を感じます。

創業してまだ12年目でこれまで驚くほどの急成長を見せたビズリーチ社の今後の動向に注視してまいりましょう。

 

<参考文献>

・「起業家のように考える」プレジデント社 / 著:田原総一朗×起業家18人

・『未来をつくる起業家」クロスメディア・パブリッシング / 著:ケイシー・ウォール

・「絶対にブレない『軸』のつくり方」ダイヤモンド社 / 著:南壮一郎

・「ともに戦える『仲間』のつくり方」ダイヤモンド社 / 著:南壮一郎