ビズリーチはなぜ人材業界への新規参入に成功できたのか?

労働人口の減少で人手不足の中、優秀な人材獲得競争が過熱しているのか、最近テレビCMでよく目にするビズリーチ。彗星の如く現れ新興企業として一気に知名度を上げた感があります。

ビズリーチはなぜ人材業界への新規参入に成功したのかを経営コンサルタントとして、ビジネスモデルの視点で説明します。

 

ビズリーチ社の起業のきっかけとは?

現社長である南壮一郎氏は1976年生まれ、米国大学卒業して外資系投資会社、楽天球団などを経て、転職活動をします。その時に多くのヘッドハンターと出会いますが、そこでのアドバイスがまったく異なります。ヘッドハンターによって提案する業界職種がバラバラで求職者と求人企業のマッチング方法に違和感を覚えます。それが転機となり起業を思い立ち、2007年にビズリーチ社を設立、2009年に最初の商品は管理職・グローバル人材に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」です。

 

主力商品「ビズリーチ」のダイレクト・リクルーティングとは?

 社名と同じ名称である主力商品「ビズリーチ」は高収入層のビジネスパーソンを対象とした求職情報サイトです。「ダイレクト・リクルーティング」――求職者と企業をそれぞれ可視化してお互いが直接インターネット上でアプローチできる仕組みも特徴のひとつです。これにより企業が会員である求職者の経歴書を見て直接メールを送ってスカウトすることが可能となりました。さらに実際にはヘッドハンターも登録することで閲覧でき、求職者へアプローチできます。現在の会員数は100万人、累計利用企業7,200社、登録ヘッドハンター1,800人、求人案件7,800件となっています。

 

現在は「ダイレクト・リクルーティングのビズリーチ」のポジションを獲得していますが人材業界の方の情報によれば、実際にはリクルート社が先行して商品化していたようです。

 

ビズリーチ社がダイレクト・リクルーティングの後発にもかかわらず、これを強調して参入し、現在のポジションを獲得できたのは、先発が大企業でフルラインの求人商品を持つリクルート社だからではないかと考えます。

 

今やリクルート社のサービスは幅広くダイレクト・リクルーティングを競争対抗上全面に打ち出せない状況が生まれてきています。そんな大企業のジレンマを突いた、一点突破は南社長の真骨頂と言えるでしょう。

 

主力商品「ビズリーチ」の常識破りのビジネスモデルとは?

 人材業界の慣習を打ち破る日本初の求職者からの課金が特徴の転職サイトです。

 このビジネス・モデルは米国市場で人材紹介会社「The Ladders.com」がすでに成功していて、南社長が直接「The Ladders.com」の社長と会ってその方法を具体的に聞いてきたそうです。その考え方とは結婚相談会社ビジネスをベンチマークにすることでした。

 

結婚相談会社は男性と女性の両方から料金を取り、お互いにお金を払っているからこそ

真剣に相手とコミュニケーションを取るから満足度が高いと考えました。確かにそう考えると求職者・求人企業を男女に置き換えると両方から課金することが自然に思えてきます。

 

そしてこれまで人材ビジネス業界は、お金をいただく求人企業の満足度に注力していた視点からこのビジネスモデルによって求職者も合わせた両方の満足度を上げる視点をもたらしたともいえます。

 

しかし、「The Ladders.com」を参考にしながら構想し、商品化の前に日本の人材業界の方々に相談したところ、ほとんどがそれはビジネスにならないと否定的だったようです。

 

これは人材業界の巨人であるリクルート社が確立した求人企業から収益で充分にビジネスになっているのに、その慣習を変えること、これまで前例がなく常識破りであることが理解されなかったのが理由のようです。

 

それでも南社長は求職者からの課金を実施したのは、米国まで成功企業の社長まで直接会いに行き具体的方法を聞いて確信を持てたことです。ここに学ぶべき点は南社長の抜群の行動力といえます。

 

現在は無料で使える部分と有料の部分があり、有料の場合求職者からの月額課金料金はタレント会員2,980円(現在の年収が750万円未満)、ハイクラス会員4,980円(現在の年収が750万円以上)とあります。

 

主力商品「ビズリーチ」の成功要因とは?

 この当時なかった会員登録に年収制限を設けてハイクラス求人に特化(参入時750万円を超える日本の給与所得者は13%)したニッチ戦略とダイレクト・リクルーティングを最大のセールスポイントで人材ビジネスに新規参入しました。

 

ダイレクト・リクルーティングの後発企業にもかかわらず、これを強調した大量の広告での一点突破によって、「ダイレクト・リクルーティングのビズリーチ」のポジションを獲得し、同時にブランディングの構築に成功しました。その結果、これまでの業界になかった常識破りの求職者から課金するビジネスモデルも成功しました。

 

ビズリーチ社には豊富な人材のデータベースと質の高いシステム開発力があり、それを活かすため、異分野への進出の可能性を感じます。

創業してまだ12年目でこれまで驚くほどの急成長を見せたビズリーチ社の今後の動向に注視してまいりましょう。

 

<参考文献>

・「起業家のように考える」プレジデント社 / 著:田原総一朗×起業家18人

・『未来をつくる起業家」クロスメディア・パブリッシング / 著:ケイシー・ウォール

・「絶対にブレない『軸』のつくり方」ダイヤモンド社 / 著:南壮一郎

・「ともに戦える『仲間』のつくり方」ダイヤモンド社 / 著:南壮一郎

社員の幸福を仕組み化する会社

会社より社会とかかわれ」とサイボウズの青野社長は語ります。

「家事や育児から学ぶことが多い。仕事だけでは関われなかった病院や学校、パパ友や

ママ友の世界が広がった。以前の僕は会社人であり、社会人ではなかった。僕は育児を通じて社会を知ることができ、経営者としての意思決定の水準も上がったと思う」

(2019/2/20 日経電子版)

 

なぜこのような発想を持つようになったかというと、2005年当時のサイボウズベンチャー企業によくある長時間労働が常態化する環境やM&Aの失敗による業績低迷が重なりました。その結果、離職率が28%まで高まって、83名いた社員のうち23名が辞めていくことがありました。それに危機感を抱いた青野社長が働き方改革に乗り出したことに始まります。

 

そして働き方改革の目的は生産性を上げることではなく社員の幸福度を増やすことだといいます。

 

この社員の幸福度を増やすことを経営コンサルタントとしてビジネスモデルの視点で説明したいと思います。

 

サイボウズの会社内容

1997年設立当初からグループウェアの開発販売を行い2000年に株式上場。主力商品の中小企業向けグループウェアサイボウズOffice」は国内トップシェアを誇ります。

 

グループウェアとは「企業内部の情報共有」「ワークフローの整理統合」「チームワークの向上」などにより業務の効率化を図ることを目的としています。

 

具体的には「顧客リスト」「売上表」「日報」などの共有や社員同士の「スケジュール共有」などの機能があげられます。

 

サイボウズのサービス商品内容

主な商品は中小企業向けグループウェアサイボウズOffice」、大企業・中堅企業向けグループウェア「Garoon(ガルーン)」、データベースサービス「kintone」などとなります。

 

その競合はIBM、マイクロソフト、グーグル、セールスフォースなどIT業界の巨人ともいえる名だたるグローバル企業がひしめき合う状況のなか、創業以来、日本人ユーザーに向けたきめ細かい対応や使いやすさで確固たるポジションを獲得しています。

 

サイボウズの戦略とは?

創業以来グループウェアに専従し「グループウェア世界トップシェア」を目指しています。そして注目すべき大きな変換点は、商品販売の主力を創業以来のパッケージ販売からクラウドサービスへと移行したことです。パッケージ販売は顧客がバージョンアップ版やユーザーサポート契約に入らない限り、購入時だけの1回限りのフロービジネスとなります。それがクラウドサービスでは継続して課金されるストックビジネスとなります。

 

2011年から本格稼働したクラウドサービス事業は、当時40億円の売上高しかない会社にもかかわらず、19億円の累積赤字を出しながらも開発が続けられました。上場企業である以上、株主からの批判も多かったと思われるなかでクラウドサービス比率を高めたことにより、現在の安定的な売上と利益を実現したといえるでしょう。

 

サイボウズの幸福度を高める経営の仕組みとは?

この安定的な売上と利益が社員に心の余裕を与えて、幸福度を増すことにつながるのです。

 

合わせて、新しい人事制度を取り入れて「働き方改革のリーダー企業」のポジションです。それは会社では人事評価をせずに、「あなたが転職したらいくら?」という転職市場での評価で賃金を決めるという新しい考え方の制度を採用しています。

 

これは、そもそもヒトがヒトを評価することの難しさと、働き方改革を推進する中で「社員」「外注」「副業」などの立場や仕事の仕方が絡まりあい混とんとして、評価の難易度が更に高まるという状況への打開策から生まれたそうです。

 

さらに「育児休暇や介護休暇を最長6年取得できる制度」「働く時間等をライフスタイルの変化に合わせて選択できる制度」「業務時間以外であれば副業を認める制度」など社員に多様な働き方を提供しています。

 

 

サイボウズの今後の展望とは?

このように新しい仕組みを経営に取り入れながら、「離職率が低くなった」という結果に繋がりました。しかし、きつい職場環境が緩くなって居心地が良くなった…ということではなく、本当の意味での「社員の幸福度」の検証はこれからが本番かもしれません。

 

今後、一見矛盾した要素をはらむ「会社の継続」と「社員の幸福」という永遠の課題にも真剣に向き合いながら、どのような仕組みで青野社長が経営の舵取りをするか注目してまいりましょう。

 

 

*参考文献

・「シェアNo.1の秘訣」財界研究所 著:日本IT特許組合

・「会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない」

PHP研究所 著:青野 慶久

・「チームのことだけ、考えた」ダイヤモンド社 著:青野 慶久

「ブランディング」できないと生き残れない

コンサルティングしている顧客企業から『固定客ができにくいので、単に好きというレベルの顧客ではなく「顧客のファン化」をできないか?』という相談がありました。

 

その「顧客のファン化」の成功例として思い出したのが、ビールメーカー「ヤッホーブルーイング」です。ヤッホーの井出直行社長の著書「よなよなエールがお世話になります」を読みなおしてみました。

 

一見奇をてらったようなこの会社のやり方ですが、ブランディングの教科書からすると基本に忠実にやり続けることで成功している会社といえます。

 

「ヤッホーブルーイング」は設立1996年、ホテル業界で活躍中の「星野リゾート」星野佳路氏が創業者となり、長野県軽井沢に本社があります。主力商品は「よなよなエール」「水曜のネコ」などのクラフトビール(職人がつくるこだわりのビール)です。クラフトビールメーカーでは国内最大手ですが、現状ビール市場のシェアでは、クラフトビールは1%にも達していない小さなカテゴリーです。

 

創業当時は全国的な地ビール・ブームに乗り売れますが、流行の終焉とともに店頭で売れなくなり倒産の危機となります。そして復活のきっかけは当時営業部員だった井出社長が始めたインターネット通販です。やはり当初は売れませんが、メルマガでクラフトビールならではのうんちく、醸造設備などを説明しているうちに少しづつ売れていきます。

 

ターゲットは「知的な変わり者」、近くの店頭で手軽にビールが買えるのにもかかわらず、インターネット通販で高いビールを銘柄指定して買うようなこだわりの人の意味です。

 

その「知的な変わり者」へ向けたプロモーションは

 

  1. 目に留まる
  2. 強く記憶に留まる
  3. 口コミしてもらう

この3つを揃えて業界初、インパクト、ユニークさを求めて売上に求めません。

例えば「夫婦幸せ50年セット」販売です。夫婦1組限定で450万円支払うと50年間ずっとビールを届けるという企画で、メルマガで告知したところ読者から大うけしました(結局申し込み者はなし)。別の例では、会社の飲み会で上司が先輩風を吹かすとAI(人口知能)が感知して、本物の風が吹き出る扇風機を貸し出したりしています。

 

さらにそれぞれの商品ターゲットでは大手メーカーでは真似できない思い切った絞り込みを行います。例として「水曜日のネコ」というホワイトビールは、週のまん中に低アルコール飲料を飲んで、また明日からがんばろうとする都市部で働く30代女性を想定しています。

 

このような尖がったネーミングも含めた商品開発、プロモーションによって特定の強固な顧客をつくり、ファン化さらには伝道師となるような仕組みをつくっているのです。

 

そのロール・モデルとして「ハーレー・ダビットソン」を意識しています。ハーレーはバイクだけを売っているのではなく、ハーレーに乗るかっこいい自分を演出できるという情緒的価値を売るという考え方です。これに対して「ヤッホーブルーイング」は「ビールを中心としたエンタテインメント」を売ると捉えています。

 

そのために「お客様との密着プレー」として、イベントやSNSなどを通じ、共感する、理想像の実現、自己確信、癒される、仲間をつくる等の活動で「顧客のファン化」を行っています。

ブランディング」とはその顧客を集める引力と考えます。

 

創業者の星野氏が「個性豊かなビール文化を日本に根付かせたい」から生まれた「ヤッホーブルーイング」は、社長となった井出氏にも受け継がれて少しずつ現実となってきています。

 

ビール離れと言われ市場全体では縮小傾向ですが、クラフトビールのシェアは17年0.7%から21年3%の予測もあり存在感が大きくなってきています。大手のキリンビールも「ヤッホーブルーイング」を含めたクラフトビールの販売に乗り出しました。

 

この成功は「個性豊かなビール文化を日本に根付かせたい」という夢を本気で描いて実行する力から生まれたと感じます。次にターゲットを絞る込み、強固な顧客をつくるために勇気をだして躊躇するほどの商品開発、プロモーションによって支えられたブランディングの成功といえます。

「パーク24のすごい潜在能力」

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市街地や住宅地の空き地を駐車場にした黄色のロゴマークの「Times」をよく見かけます。この会社を調べていくうちに、将来大化けする可能性、すごい潜在能力を感じました。

 

主な事業は駐車場とカーシェアとなります。これが大きな成長性を秘めている理由を分析してみます。

 

■パーク24の主な沿革

1971年「西川清」氏(現社長「西川光一」氏の父親)がニシカワ商会から85年に会社分離する形で駐車場経営を開始します。先代社長はそれまで月決め駐車場しかなかった市場に、自動駐車装置を用いた24時間無人時間貸し駐車場をつくりました。99年に上場。07年に現社長「西川光一」氏が社長就任。売上2,329億円、29期連続増収(2017年10月決算)という実績で、駐車場事業会社、カーシェア事業会社としてはどちらも最大手のポジションです。

 

■駐車場事業の強み

駐車場の必要な場所において、圧倒的な供給力不足が現状です。それを開拓しているのが営業チームです。空き地情報から地主と交渉して、賃貸契約に至ることは「100件に1件くらい」の割合です。16年3月時点では19ヵ所だった営業拠点も全国100ヵ所に増やし、営業人数も強化しながら駐車場の増加に務めています。1年間の増加数1,084件、累計18,255件となります(2017年10月時点)。この数が29期連続増収の下支えをしています。

 

■カーシェア事業の強み

2009年に本格参入したカーシェア事業ですが、時代が早すぎたのか、利用の認知も進まず2013年まで赤字が続きました。車両台数が1万台を超えた2014年に個人利用だけでなくその利便性から法人利用に火がつき黒字化していきます(現在の法人比率は39%/2017年10月)。現在は車両台数が2万台を超えて市場も導入期から成長期に入ったようです。「ステーション」と呼ばれる乗る場所、降りる場所が多いほど利用者の利便性は向上するので、スケールメリットは大きいと言えます。さらに2020年には3万台に増やす計画のようで、カーシェア市場拡大の中で、利用者にとってもパーク24にとってもますます優位なポジションが築けます。

 

カーシェア事業は駐車場スペースの一角を利用した形で運営していて、駐車場事業の土台に上に成り立ち、新規に場所を探す必要がない強みがあります。

 

■パーク24の戦略

西川社長は戦略として『駐車場をいかに便利に使ってもらえるか、そこに寄与できること以外はやらない』と明快です。国内の駐車場開拓とカーシェアの車両数を増やすことに注力しながら、海外の駐車場事業会社を買収し、将来は海外のカーシェアも検討しているようです。

 

■パーク24の将来性

今後車は所有から利用へと移行して、さらにAIによる自動運転となれば、カーシェアは手軽なタクシーと位置づけられます。利用者が乗り降りする場所の近くに駐車場を数多くもち、合わせてカーシェアを所有するパーク24は次世代のクルマ社会の主役に踊り出る可能性があるのです。

 

(参考文献)

地味なパーク24が過去最高益を更新するワケ 東洋経済オンライン 2016/06/03

特集/絶好調企業の秘密 週刊東洋経済 2018/10/20

特集/勝ち抜く企業 週刊東洋経済 2017/6/17

カーシェア事業で独走するパーク24 日経ビジネスオンライン 2016/07/04

「カカクコムはどうして利益率が高いのか?」

 

日経ビジネスの「隠れ高収益企業」特集(2018/9/24)の中で、取り上げられていたのが「カカクコム」です。営業利益率は48.9%という驚くべき数値が目に留まりました。

 

インターネットのメディア事業を展開している「カカクコム」が、なぜこのような高い利益率が出ているのか調べてみました。

 

カカクコムの事業の柱は価格比較の「価格.com」と飲食店紹介の「食べログ」です。

そのどちらのカテゴリーでも集客力でトップのポジションとなります。

 

■カカクコムの沿革

1997年創業者の「槙野光昭」氏が会社員時代に仕事として、パソコン関連の自社商品・他社商品の店頭価格をおこなっていたのがきっかけです。消費者は比較して安くところで買いたい、小売店は競合の価格を知りたい。これらのニーズを満たすために「価格.com」の原形のサイトを立ち上げ創業します。創業当時はひとりで価格調査を行い、手作業で更新していました。

 

2003年東証マザーズに上場、2005年東証一部上場、「食べログ」を立ち上げします。

現在の会社全体の売上は約468億円、営業利益は約229億円、売上構成比は「価格.com」が45.9%、「食べログ」が40.9%となります。それぞれの事業別の利益率は公表されていません。(2018年3月期 決算説明資料)

 

■「価格.com」はなぜ利益率が高いのか?

対象商品は電気商品を始め、自動車やペット、保険やローンなど多岐にわたって価格比較した専門サイトです。創業当時は先述したように自社で価格調査をしてサイトのデータ更新していましたが、アクセス数が増えるとその販売力から販売事業者自体が情報更新するようになりました。それが結果的に情報更新のための人件費の削減となっています。メリットはそれ以外にも情報精度の高さや販売事業者が値付けした製品が安い順に並ぶので、競争対抗上、できるだけ上位のポジションを目指すため更なる値下げを促す仕組みとなっています。

 

その主な収入源はサイトから消費者が購入した販売事業者からの手数料とサイト内の広告となります。

 

■「食べログ」はなぜ利益率が高いのか?

食べログ」はユーザーからの飲食店の評価を5点満点で数値化した口コミによるお店の紹介サイトです。飲食店紹介サイトとしては「ホットペッパー」、「グルナビ」の後発ですが集客力では一番です。これはサイト利用者にとっては、評価の数値化の分かりやすさと口コミ内容は店の選定に使いやすい結果といえます。

 

店舗情報の誤りなどの管理はカカクコムで行いますが、基本はユーザーからの情報で構成しています。こちらも情報入力の人件費が競合と比較しても少ないといえます。

 

さらに過去には「評価のやらせ」(業者がお店からお金をもらって評価を高くする口コミをする)がありましたが、評価の数が増えるにつれて情報の精度は高くなるといえます。

後発の口コミサイトがいくつか出てきていますが、「食べログ」が先行して蓄積したデータ数の信頼性は当面その差を埋めにくいと考えます。

 

その主な収入源は飲食店からの販促サービスとネット予約からの手数料収入、ユーザー会員からのコンテンツ利用料、サイト内の広告などとなります。

 

■「カカクコム」に学ぶ仕組み化

「最良の仕組みは仕事をなくすこと」と言われています。「価格.com」・「食べログ」は場所(プラットフォーム)を提供していますが、中身(コンテンツ)は外部に任せて、その管理のみを行っています。それがマイナスになるどころか最大の強みになっています。

 

そして最初の段階は利用者を増やすことに注力して、利用数が大きくなり影響力が大きくなった段階で稼ぐという「サービスが先、利益は後」の発想です。

 

まず利用者の利便性の向上を考えながら、その仕組み化に成功した結果が驚異の利益率を生んだのです。

 

(参考文献)

ナンバーワン企業の儲けるしくみ(幻冬舎

コミュニティをビジネスに活用した成功事例

コンサルしている社長から顧客をコミュニティ化して、ビジネスとして活用できないか?という課題をいただき、調べていたら「ハーレー・ダビットソン・ジャパン」(以下H.D.J)の事例がおもしろいので今回のテーマとします。

 

ハーレー・ダビットソンといえば、今年の6月、欧州連合(EU)による関税を回避するため生産拠点を米国から移転すると発表したことに対して、ドナルド・トランプ米大統領

それを批判したことで話題となりました。

 

そのH.D.Jとは米国「ハーレー・ダビットソン」、世界5位のオートバイメーカーの100%子会社の日本での総代理店的な立場で、ディーラー(販売店)を通して消費者への販売を行っています。

 

そもそも「コミュニティ」は、共同体または地域社会などと訳されます。

そして実際に「ビジネス・コミュニティ」を運営している知人に聞くと、その不可欠な要素は下記となります。

  1. 目的の共有
  2. 定期開催

■H.D.Jのコミュニティとは?

H.D.Jのコミュニティは、全国各地の店舗に「チャプター」と呼ばれる顧客専用のツーリングクラブのことをいいます。各店舗単位でツーリング・プランを立て、定期的にツーリングを楽しみながら、店舗スタッフと顧客、顧客同士が仲良くなる仕組みです。それはハーレーダビットソンというバイクを共通のホビーの中で生まれる「物より思い出」を体感でき、それを共有できる場所でもあります。

 

これによく似ているのが高価格帯の自転車の世界です。多くの専門店が顧客向けのチームを持ち、集団トレーニングやレースの遠征などの活動をしています。これを通じて、店舗側がメカニック、トレーニング、レースなどをサポートする代わりとしてその店舗で、新規の自転車、部品、メンテナンスを暗黙のうちに購入する仕組みとなっています。この「コミュニティ・マーケティング」とも言える体制が確立できると、安いネット販売と競合することなく、価格競争をせずに利益を確保することが可能になります。しかし、自転車の場合はあくまで店舗単位ですが、ハーレーの場合は「H.D.J」⇔「販売店」⇔「顧客」とより強固に組織化されているのが特徴です。

 

さらに、このような組織では「販売店スタッフとお客様」という従来の関係性ではなく「ハーレーのことを教えてくれる先生(スタッフ)と生徒(顧客)」のような側面もあり、コミュニティの連帯感が高まっているともいえます。

 

■コミュニティを活用したマーケティングとは?

現在、顧客は単なる価値の受け手ではなく、価値創造をつくる役割も担います。SNSなどでの情報発信を行い、商品の評価や時に伝道師の役割を果たしています。特に趣味の世界ではよりその傾向は顕著で「顧客コミュニティ」化によるマーケティングが成功しやすい素地があるといえます。その意味でもハーレーは「顧客コミュニティ」の成功例といえます。

 

■ハーレーの今後の課題とは?

大型の存在感のあるハーレーに乗り、革ジャンとサングラスで悠々とチャプターに入り集団で走ることは自己表現できる場所の提供ともいえます。

しかし、このような1969年米国映画「イージーライダー」の世界観は古くなりつつあり、バイク業界全体の課題であるオーナーの高齢化も伴って、今後は大きな戦略の見直しが必要となりそうです。

 

今後電動バイクが主流となる業界の中で、ハーレー社も来年2019年に電動バイクを市場投入すると発表しています。車の基本機能は「走る、曲がる、止まる」なのに対して、これまでのハーレーのプロダクトコンセプトは「Look,Sound,Feel」であり、大きく特長のあるスタイル、独特のエンジン音、乗った時に感じるエンジンの鼓動などを楽しむための乗物です。

 

これからどう電動バイクのハーレーが顧客の満足を得られるかで、これからも大手二輪メーカーとして生き残るのか、それともデジタル化の中でも、一部のマニア層に今でも愛用されているレコード針メーカーのような「残存者利益」(過当競争や収縮傾向にある市場において、競争相手が撤退したあと、生き残った企業のみが市場を独占することで得られる利益)を追求する企業となるのかの分岐点となりそうです。

 

今後ハーレーの「顧客コミュニティ」の課題は、いかに若年層の新規顧客をコミュニティへ入ってもらい満足度を上げることができるかが鍵となりそうです。

DMMはどうして急成長できたのか?

 

「学びを、キャリアを加速する。」をテーマに旅行事業を開始することを発表したのがDMMです。話題となるあらゆるジャンルの新事業参入に顔を出す最近元気な会社です。動画配信から外国為替証拠金取引(FX)、オンラインゲーム、仮想通貨、ロボット事業など様々な業態で実績上げていながら、その実態が見えてこない部分があります。そしてDMMがなぜここまで多数の事業を展開するのか、その意図をインタビューを中心に迫って調べてみました。

 

■DMMの創業者とは?

1961年石川県生まれで現在57歳の「亀山敬司」氏。地元の高校卒業後、税理士を目指して上京、専門学校に入学するも中退。その後、東京・六本木でアクセサリーの露天販売を始めますが廃業し、地元石川県で飲食店経営などを経て、レンタルビデオ店を開業とかなり転々としています。世間一般の常識からすれば、一つの事を続けられない人と見られてもおかしくありません。

 

そしてレンタルビデオ店の開業をきっかけにアダルトビデオメーカーとしても製造販売を行い、1998年インターネット黎明期に動画配信事業を開始、現在のDMMの原型ができあがります。翌1999年に石川県で株式会社デジタルメディアマート(現DMM.com)を設立します。

亀山氏本人は『当たったのがたまたまAVだっただけ』とアダルト業界にこだわりはないようですが、同事業で蓄積した200億円以上の内部留保で2009年から多角化を推進し、上記の通り様々な事業に手を広げます。異色経営者DMMグループ亀山敬司伝 東洋経済オンライン 2015/05/08

■DMMの事業内容とは?

未上場のため公開情報は限られますが、2017年2月決算では前年対比3割を超えて好調な

ようです。事業別の売上の主力はインターネットを活用した「動画・配信事業」、「オンラインゲーム事業」、太陽光を中心とした「エナジー事業」となります。それ以外は「通販・レンタル事業」、証券事業、インターネットを活用した英会話事業、モバイル事業、3D事業及びロボット事業などなど数多くの事業領域でサービスを拡充していています。

 

潤沢な内部留保をつぎ込んで積極的に新規事業を推進する亀山会長はインタビューの中で 参入を決めるポイントの一つは、世間の支持をちゃんと受けられるものであること。いくら儲かっても世間に支持されなければ長続きしない。もうひとつは「はやりもの」であること。と言っています。Special Interview出た利益はすべて新規事業につぎ込む 週刊東洋経済 2017/12/30号

2017年に発表した「シェアリング自転車」事業は「はやりもの」という視点で参入を予定しましたが、中国で放置自転車が社会問題化すると日本でも世間の支持が得られないと判断したのかすぐに撤退を発表しています。短期的な市場の成長が見込める分野でなく、長期的な視点で参入分野を見極めていることがうかがえます。

 

■新規事業を生み出す社長直属部隊「カメチョク」とは?

元々のアイディアマンながら50歳にもなるとアイデアが浮かばなくなる。SNSスマホ……となると頭がついていかないと考え、2011年にカメチョク(亀山氏直下の新規事業部隊)を社内に設置。起業家らのアイデアを持った外部の人へと新規事業開発を業務委託する仕組みを構築します、大ヒットとなったオンラインゲーム「艦隊これくしょん」や「DMM英会話」「3Dプリンターサービス」などを成功させました。異色経営者DMMグループ亀山敬司伝 東洋経済オンライン 2015/05/08

 

カメチョクの内容は、応募者200名の中から50名と業務委託契約金はいい値で出すけど、半年で形にならなかったらクビ」という方針で半年後に残るのが10名、その中から生まれたオンラインゲーム「艦隊これくしょん」が大ヒットし49人分の損を全部取り返す――という仕組みになっているそうで、これがDMMの新規事業の取り組みの神髄であり、どれが成功するかわからないととりあえずやらせてみる仕組みになっています 。解決編 異形の経営者の秘めた矜持 エロマネーが支える「愉快ナル理想工場」日経ビジネス 2016/01/11

 

社内の事業の多くが死屍累々で失敗ばかりといいながら、これまで平均年30%の売上の成長を果たしてきた原動力は数多く新事業をやってみて、その結果として1/50でも大ヒットすればいいという確率論で成り立っています。

 

■DMMの強みとは?

現在社長職は36歳の片桐孝憲氏に譲り、亀山氏は会長職となっています。合わせて社内の組織体制を見直して、持ち株会社化して各事業部への権限移譲を推進しています。

 

とはいえ、会長の影響力は大きいようで古参のメンバーであるネット部門責任者が撤退の早さが強みと亀山氏を評しています。言葉を裏付けるように、完成間近のプロジェクトでも競合の動き次第で突然やめることもあり自分の感性よりも、実際に売れているかどうかに素直に従うという亀山氏の撤退の早い決断力が失敗を企業の致命傷とならないDMMの強みとなっています。異色経営者DMMグループ亀山敬司伝 東洋経済オンライン 2015/05/08

 

■DMMの成長理由とは?

事業があまりに多岐にわたり実態が見えてこないDMMですが、その真相のひとつは成長分野を見極めて参入していることです。もうひとつは成功するのは確率論と割り切り、数多くの新規事業への参入と撤退の時に見せる迅速な経営判断の組合せです。それは他社を寄せ付けない圧倒的な「トライ アンド エラー」の数で成り立っています。

露天商から3000人を率いる従業員グループ企業のトップにいる亀山氏はまるで映画のようなサクセス・ストーリーですが、その行動原理は一貫して変化はないのかもしれません。