「「AI失業」前夜-これから5年、職場で起きること」を読んで、日本の将来を憂う

最近出た本で「「AI失業」前夜-これから5年、職場で起きること」(PHPビジネス新書/鈴木貴博)がおもしろかった。今年から2023年の近い将来日本で起こる混乱が想像できます。

 

この本ではAI失業は「運輸」と「金融」から始まると考えます。理由はまだ人工知能のコンピュータのコストは高く、限られたパワーを世界の資本がどこに見返りが大きいかと見ると自動運転車市場とフィンテックなのです。自動車の例で説明すると。すべて人工知能で完全に運転できるようになれば、世界の運輸市場と物流市場に革命が起ります。そして2022年に自動運転車が一般化すると予測した上で、日本の長距離トラック、バス、タクシードライバーが一斉に失業すれば、その規模は123万人に及びます。これはリーマンショック後の派遣社員の雇い止めをはるかに上回り、大きな社会問題となります。そしてその日本的な解決方法は、「トラック輸送、タクシーやバス輸送などの業務に関わる自動車は、必ず登録された運行管理者を最低1人乗務させる必要がある」という法律をつくることで、職業ドライバーの失業を防ぐのです。すでにその前例として、ウーバーに代表される配車アプリで日本は厳しく規制して一般の自家用車がライドシェアの形で車を乗せる行為を白タクとして禁止しているため、アメリカや中国のような配車サービスの普及はみられません。

 

このような規制が様々な業界で起これば、日本はそのグローバルな経済のダイナミズムから置き去りにされ、古いテクノロジーに固執するガラパゴスな経済社会へ堕ちていく可能性があるとこの本は示唆しています。

 

これは法規制だけでなく、経営方針として社員の雇用を守ることを優先事項と考えて目的化することは立派でだれからも非難されることでないですが、それが新しいテクノロジーの導入の遅れにつながるのであれば、憂慮すべきことと考えます。

 

この話で思い出すのが、法人向けクラウド会計ソフト会社の営業の方に話を聞く機会があり、セールス提案のため、経理スタッフの業務を減らし、人件費カットを可能にできることを訴求しても顧客層が上場を目指すIT企業など限定的であるようなのです。多くの企業ではAI以前の業務の自動化でも雇用を守ることや経理部門からの抵抗から採用されにくい現状をお聞きすると、上記のような悲観論が現実味を帯びてきます。

 

赤城乳業「ガリガリ君」のプロモーション

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電車に乗っていると「ガリガリ君×アディダス 2018 サッカー日本代表Tシャツ当たるキャンペーン」を告知するステッカー広告を見て思い出しました。この会社はプロモーションの側面から見ると非常におもしろいのです。ガリガリ君のキャラが登場するゲームをコナミと、マンガを小学館コロコロコミック)、ガチャポンキーホルダーをバンダイと組んでつくっています。今回もそうですがワールドカップサッカーに合わせて、ガリガリ君が日本代表ユニフォームを着た商品とアディダスと組んだ日本代表Tシャツをつくっています。さらにガリガリ君の妹キャラである「ガリ子ちゃん」でJR東日本のスキー旅行キャンペーン「JR SKISKI」などをやっていました。こうした他社とのコラボ企画は、顧客との接点強化、話題つくりが販売本数の増加へつながっているのです。

 

商品自体でも話題つくりをおこなって成功をしています。12年にアイスキャンデーとの組み合わせではありえない「コーンポタージュ味」は、「まずくて全部食べられなかった」「意外にいける味だった」とSNSで拡散され、それがネットニュースから火がつき、TVのワイドショーなどで取り上げられました。

その結果、わずか15万円のPR活動費で、5億円以上の宣伝効果を上げたといわれ大ヒットしました。さらに翌年の13年は「シチュー味」を出し、今度はシチュー味で勝負と話題となりました。しかし、この話には落ちがあって、その翌年の14年に3匹目のドジョウを狙って「ナポリタン味」を出しますが、まったく売れずに3億円の赤字となったそうです。この失敗さえもテレビ番組の中で「味がまずかったので、3億円の赤字を出した」といってしまいネタに出来るところにこの会社のたくましさとしたたかさを感じます。この話題つくりは偶然ではなく、成功も失敗も意図的にPRに活用できる風土は、隠ぺい体質が多い日本企業の中ですごいことです。

「シーブリーズ」 リ・ボジショニングの成功例

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自社の商品が、売上が下がってきたら再生方法を考える手法として、リ・ボジショニングがあります。自社商品と他社商品の相対価値のボジションにおいて、自社商品のボジションを移動させることで、売上を再生させるのです。

 

その成功事例として「シーブリーズ」があります。我々おじさん世代にとってのこの商品は夏の海水浴に持っていく定番のスキンケア・ローションでした。しかし、ここのところの若者の海やプールに行く機会の減少や競合商品の増加、ブランド自体の高齢化、消費者からの飽きなどが原因で売上も激減していました。

 

これを発売元の資生堂が再生させたのです。ターゲットを20~30代の男性から女子高校生へ、使う場所を海(日焼けケア)から日常(汗ケア)へと移動させることで、低迷期の8倍に売上を伸ばしたのです。

 

調べてみると「シーブリーズ」は1902年に米国で天然由来のスキンケアの消毒薬として出来たようです。現在も商品の中身は変わらないようなので、商品の絶対価値は変えずにボジショニングという相対価値で今も生き残っているのです。

 

ここで学ぶべきは、ブランド自体の高齢化を理由に「シーブリーズ」販売を止めることは簡単ですが、この商品力を信じ、これまでの常識にとらわれず、思い切ったリ・ボジショニングをやった資生堂担当者の決断です。そしてどんなに定番商品となっても価値は必ず劣化するということ、それは「顧客は飽きる」、「競合が増える」からです。

 

現在のCMをyoutubeでみると、「広瀬すず」を起用した今どきの洗練されたつくりとなっていますが、昔のイメージと乖離が大きすぎてピンときませんでした。昔のCMを探してみると1995年頃のものがあり、この世界観だよなとホッとできました(笑)。

 

現在のCM

https://www.youtube.com/watch?v=4RftgYE9SmY

 

1995年頃のCM

https://www.youtube.com/watch?v=1wASsqWVsfI

 

 

DMMの創業者を調べてみた

最近なにかと新事業で話題となるDMMですが、動画配信やオンラインゲーム、仮想通貨、ロボット事業など何をやっているか実態が分からないと思っていました。そして会社の知名度の割には創業者の話を聞いたことがありませんでした。ちょっと興味があったので調べてみました。

 

創業者の「亀山敬司」氏の経歴です。1961年石川県生まれで現在57歳、地元の高校卒業後、税理士を目指して上京、専門学校に入学するも中退します。都内の六本木でアクセサリーの露天販売を始めますが、その後、石川県に帰り飲食店経営などを経て、レンタルビデオ店を開業します。これをきっかけにアダルトビデオメーカーとしても製造販売を行い、現在のDMMの原型ができあがります。1998年、インターネット黎明期にネット配信事業を開始して、1999年に石川県で株式会社デジタルメディアマート(現DMM.com)を設立します。

 

本人は「当たったのがたまたまAVだっただけ」と特にアダルト業界にこだわりはないようで、アダルトコンテンツ事業で蓄積した200億円以上の内部留保で2009年から多角化を進めています。外国為替証拠金取引(FX)事業から始まり、太陽光発電事業、オンラインゲーム事業、ロボット事業などに参入しました。

 

元々アイディアマンだったようですが、「50歳にもなるとアイディアが浮かばなくなる。SNSスマホとなると頭がついていかない」とのことです。2011年からこれを補うため「カメチョク」(亀山氏直下の新規事業)と呼ばれる起業家らアイディアを持った外部の人を業務委託として雇い、実働部隊と資金を与える仕組みをつくっています。その結果生まれたのがオンラインゲーム「艦隊これくしょん」やオンライン英会話(DMM英会話)、3Dプリンターなどです。

 

ある年は応募者200名くらいで、そのうち50名と契約します。「金はいい値で出すけど、半年で形にならなかったらクビ」で半年後に残ったのが10名で、その中からオンラインゲーム「艦隊これくしょん」が生まれます。この大ヒットで49人分の損を1人で全部取り返してくれたとのことです。

 

これがDMMの新規事業の取り組みの神髄で、どれが成功するかわからないととりあえずやらせてみせます。社内の事業の多くが死屍累々で失敗ばかりといいながら、平均すると年3割くらい成長させている企業の原動力は数多く新規事業をやってみて、1/50でも大ヒットすればいいという確率論で成り立っていることです。

 

本人は積極的にメディアには出ないようで、顔写真は公開していません。最近メディアに出るようになったのも「DMMはヤクザがやっている」という噂を払拭するためのようです。あらためて企業が情報発信することの大切さを感じます。

 

現在はDMM.comの会長職のポジションで、未上場にも関わらず3800億円の純資産を持っているという説もあり、今や日本の資産家ランキング9位に入るといわれながら、物欲のない人らしく会社へ自転車で通っているようです。「子供のころから商売をやることが好きなんですよ。小さいころは、うどん屋とか海の家とかの手伝いをやっていたんです。昔からお金儲けが好きだったんですよ。使いたいからお金が欲しいというわけじゃないんです。お金を儲けてまた別のことをやりたいということですね。」とも語っています。

 

19歳で専門学校を中退して、六本木で露天商となり道に布をひいてアクセサリーを売っていた少年が、今は同じ六本木の高層ビルの中でグループ従業員も含めると3000人の総帥として亀山氏は君臨しています。映画のようなサクセス・ストーリーです。

 

「将来僕が引退するときは、会社を誰かに売却して、それで得た資金はボランティアなのか、贅沢なのかは分からないけど、全部使ってしまうのが理想。もともと子どもに会社を継がせるつもりはないし、財産を残すつもりもない。無理して入れても幸せになれるか分からないし、自分の手で何かを作り上げたほうが本人のためでしょう」となにか達観したようなコメントが印象的です。

「Zoom」で変わるコミュニケーション

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Video Conferencing, Web Conferencing, Webinars, Screen Sharing - Zoom

ITに弱い私ですが、必要に迫られて「Zoom」を使ってのミーティングが増えてきています。最初に使ったのは1年くらい前でしょうか。「Zoom」を使ってと相手に言われた時は、「面倒くせ―」と「使えるのか?」のネガティブな気持ちだけでしたが、段々抵抗なく使えています。

 

簡単に「Zoom」の説明をします。「スカイプ」の進化版と考えてください。

米国の会社Zoom Video Communicationsが開発したWeb会議システムです。2015年頃から使いやすさと高品質の画像と音質により、少しずつユーザーの支持を集めていたようです。

 

スカイプ」との比較です。接続方法が「スカイプ」はIDを探してコールする必要があるのに対して「Zoom」はURLをクリックするだけです。接続可能人数が「スカイプ」が25名まで(音声通話)に対して、「Zoom」は100名まで可能です。価格は「スカイプ」が無料に対して、「Zoom」は2人での対話であれば時間無制限で無料ですが3人以上で40分以上使う場合は有料会員(月額14.99ドル/1,600円程度)になる必要があります。そして最大の特長は「Zoom」は画像と音質、接続安定性が「スカイプ」と比較して高いということです。

 

これまで1対1の対話だけでなく、8名前後のミーティングの司会を何度かやった経験からリアルの会議に近いストレスのない状況でやれることに気がつきました(とはいえ、最初は参加者からのチャットとか機械上の挙手に気がつきませんでした(汗))。特に仕事などの打ち合わせでは月1回リアルに集合するよりも、月2回「Zoom」で集まる方がコミュニケーションとしてははるかに有効だと感じます。

 

考えてみると、子供の頃観たSF映画の「TV電話」をいつの間にか自分も使い始めていたのです。営業の仕事をやっているので、お客さんと実際に会うこと、面談することを何よりも大切にしていましたが、それも変化していくのでしょうか?今後は仕事だけでなく、メンバーの住んでいる場所を気にしなくて済む「コミュニティ」としての活用やオンラインの学習など幅広い使い方などが考えられます。

 

このように手軽なコミュニケーション方法として、今後もWeb会議システムが進化、普及することで1日の生活時間の使い方も変化していくのでしょう。         今後「Zoomを活用したプレゼン・セミナー」や「Zoom映えする化粧教室」も出来るのでしょうか(笑)。

これからさらに加速度を増すであろう生活の変化が恐ろしくもあり、楽しみでもあります。

「カンブリア宮殿」で紹介されていた「メガネスーパー」にいってみる

 

メガネのフレームが壊れたので、いつも買っているメガネ屋に行こうと思いましたが、ふとちょっと前に観た「カンブリア宮殿」に出ていた「メガネスーパー」を思い出し寄ってみることにしました。

 

そのTVで取り上げられていた「メガネスーパー」は、他店との価格競争に敗れ赤字に転落していて低迷期となっていました。そこで社長交代で星崎社長となり価格ではなく、検査などのサービスを充実させて質を高めることで顧客を取り戻してV字回復したというストーリーとなっていました。

 

実際にいった店舗では、特に他店と変わらない商品展示でしたが、まず店員の方の元気のいい接客が気持ちよくここで買うことにしました。特長は検査が有料(1,000円)であるだけに、普通の視力検査に加え「夜間視力検査」「両眼視検査」「眼年齢検査」など充実した物になっていました(検査時間が30分以上あり、後半は段々飽きてしまった(笑))。さらに利き目が右か左かまでの検査があり、自分の利き目が左であることが判明しました。

 

前に買ったメガネが4万円程度だったのに対して、今回は64,584円(メガネが壊れた時の保険10,800円含む)と2万円も購入単価が上がっています。実際にメガネが出来てみないと満足度はわかりませんが、納得できればリピーターになると思います。

 

この前提となるのが、TVの中で観た「メガネスーパー」は、顧客の目に最も合うメガネをオーダーメイドで作り出すという考え方に共感することで、購入単価が上がっても納得しているという点です。

 

星崎社長は、業界一番ではなく小売りで日本一の給料を払える会社にすると宣言しています。わかりやすいビジョンを示すことで社員のやる気を高め、スタッフのアイディアもどんどん採用することで意識改革を図っています。その結果が現場での元気のいい接客につながっているのでしょう。

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店で購入する時に、「メガネスーパー」は初めてというと「カンブリア宮殿」を観たのですか?と聞かれました。その反響はすごいとのことで、特にTVで紹介させていた高田馬場店は放送から3週間経つのに全国から検査予約が入って来ていて、そのスタッフも昨日は高田馬場店にヘルプに入っていたとのことです。

 

TVの視聴率が取れなくなり、メディアとしてのパワーが落ちたといわれながら、この反響を聞くとまだまだPRとしての活用方法はあると感じました。

 

最後に番組の中の村上龍のコメントがすばらしいので、抜粋して記載します。

「星﨑さんは「鬼の経営」とか「剛腕」と評されることが多い。だが、企業再建に限らず、「力ずく」で、できることなどない。必要なのは、緻密な戦略と、辛抱強いコミュニケーション、その二つに尽きる。」

営業のやり方をPDCAで見直す

 

知り合いの若手営業マンから最近営業成績が下がっているので、その対策のアドバイスを求められました。

 

その会社の主力商品が成熟期から衰退期に入ったようで、新規顧客には新鮮さがなく、かつ高額なため営業をかけてもアポが取りにくく、結果的に訪問数の減少、売上の低迷となっているようです。

 

さらに聞いてみると、会社はこの対策として最近新商品を開発したようです。しかし、こちらの商品の主力商品よりも若干安いようですが、利益率が低く営業の立場としてはあまり積極的に動く気がしないそうです。

 

ここまでの話を聞いて、原因の最大のボトルネックは新規顧客に対してアポが取れないという現状の解決だと感じました。そしてその主力商品と新商品の顧客ターゲットは重複する部分が多いとのことでしたので、アポ取りに注力するために新商品を売り込む。実際に訪問できたら、新商品だけでなく主力商品の説明を行う。さらに顧客が主力商品に興味を示したら、その後のセールスを主力商品に注力するというステップです。

 

もう一つはPDCA(Plan(計画)→Do(実行)→ Check(評価)→Action(改善))の視点からの新規顧客に対してアポが取れない改善方法です。アポ取りのための電話やメールの内容を日々変化させて、アポ取りの回数とそのアポが取れた訪問数を毎日記録します。その訪問率が高い方法を今後採用しながら、さらに改善していきます。

 

そしてその営業マンに伝えたことは、営業は確率論なので「アポ取りの回数」が一番大切であること、毎日行う「アポ取りの回数」を決めて、その回数と訪問数を記録する。それをゲームのように繰り返すことで結果を出そうという考え方です。

 

いつの時代の営業もうまくいっている時は神様のように褒めてもらえますが、うまくいかない時はバカ扱いです。自戒もこめて、うまくいかない時は自分の行動手順を細かく分けてどこが問題なのかというボトルネックを見つけて、その解決策を考える大切さを感じました。そしてこの方法は営業のみならずすべての仕事に通じる手法であることに気がつきました。