DMMはどうして急成長できたのか?

 

「学びを、キャリアを加速する。」をテーマに旅行事業を開始することを発表したのがDMMです。話題となるあらゆるジャンルの新事業参入に顔を出す最近元気な会社です。動画配信から外国為替証拠金取引(FX)、オンラインゲーム、仮想通貨、ロボット事業など様々な業態で実績上げていながら、その実態が見えてこない部分があります。そしてDMMがなぜここまで多数の事業を展開するのか、その意図をインタビューを中心に迫って調べてみました。

 

■DMMの創業者とは?

1961年石川県生まれで現在57歳の「亀山敬司」氏。地元の高校卒業後、税理士を目指して上京、専門学校に入学するも中退。その後、東京・六本木でアクセサリーの露天販売を始めますが廃業し、地元石川県で飲食店経営などを経て、レンタルビデオ店を開業とかなり転々としています。世間一般の常識からすれば、一つの事を続けられない人と見られてもおかしくありません。

 

そしてレンタルビデオ店の開業をきっかけにアダルトビデオメーカーとしても製造販売を行い、1998年インターネット黎明期に動画配信事業を開始、現在のDMMの原型ができあがります。翌1999年に石川県で株式会社デジタルメディアマート(現DMM.com)を設立します。

亀山氏本人は『当たったのがたまたまAVだっただけ』とアダルト業界にこだわりはないようですが、同事業で蓄積した200億円以上の内部留保で2009年から多角化を推進し、上記の通り様々な事業に手を広げます。異色経営者DMMグループ亀山敬司伝 東洋経済オンライン 2015/05/08

■DMMの事業内容とは?

未上場のため公開情報は限られますが、2017年2月決算では前年対比3割を超えて好調な

ようです。事業別の売上の主力はインターネットを活用した「動画・配信事業」、「オンラインゲーム事業」、太陽光を中心とした「エナジー事業」となります。それ以外は「通販・レンタル事業」、証券事業、インターネットを活用した英会話事業、モバイル事業、3D事業及びロボット事業などなど数多くの事業領域でサービスを拡充していています。

 

潤沢な内部留保をつぎ込んで積極的に新規事業を推進する亀山会長はインタビューの中で 参入を決めるポイントの一つは、世間の支持をちゃんと受けられるものであること。いくら儲かっても世間に支持されなければ長続きしない。もうひとつは「はやりもの」であること。と言っています。Special Interview出た利益はすべて新規事業につぎ込む 週刊東洋経済 2017/12/30号

2017年に発表した「シェアリング自転車」事業は「はやりもの」という視点で参入を予定しましたが、中国で放置自転車が社会問題化すると日本でも世間の支持が得られないと判断したのかすぐに撤退を発表しています。短期的な市場の成長が見込める分野でなく、長期的な視点で参入分野を見極めていることがうかがえます。

 

■新規事業を生み出す社長直属部隊「カメチョク」とは?

元々のアイディアマンながら50歳にもなるとアイデアが浮かばなくなる。SNSスマホ……となると頭がついていかないと考え、2011年にカメチョク(亀山氏直下の新規事業部隊)を社内に設置。起業家らのアイデアを持った外部の人へと新規事業開発を業務委託する仕組みを構築します、大ヒットとなったオンラインゲーム「艦隊これくしょん」や「DMM英会話」「3Dプリンターサービス」などを成功させました。異色経営者DMMグループ亀山敬司伝 東洋経済オンライン 2015/05/08

 

カメチョクの内容は、応募者200名の中から50名と業務委託契約金はいい値で出すけど、半年で形にならなかったらクビ」という方針で半年後に残るのが10名、その中から生まれたオンラインゲーム「艦隊これくしょん」が大ヒットし49人分の損を全部取り返す――という仕組みになっているそうで、これがDMMの新規事業の取り組みの神髄であり、どれが成功するかわからないととりあえずやらせてみる仕組みになっています 。解決編 異形の経営者の秘めた矜持 エロマネーが支える「愉快ナル理想工場」日経ビジネス 2016/01/11

 

社内の事業の多くが死屍累々で失敗ばかりといいながら、これまで平均年30%の売上の成長を果たしてきた原動力は数多く新事業をやってみて、その結果として1/50でも大ヒットすればいいという確率論で成り立っています。

 

■DMMの強みとは?

現在社長職は36歳の片桐孝憲氏に譲り、亀山氏は会長職となっています。合わせて社内の組織体制を見直して、持ち株会社化して各事業部への権限移譲を推進しています。

 

とはいえ、会長の影響力は大きいようで古参のメンバーであるネット部門責任者が撤退の早さが強みと亀山氏を評しています。言葉を裏付けるように、完成間近のプロジェクトでも競合の動き次第で突然やめることもあり自分の感性よりも、実際に売れているかどうかに素直に従うという亀山氏の撤退の早い決断力が失敗を企業の致命傷とならないDMMの強みとなっています。異色経営者DMMグループ亀山敬司伝 東洋経済オンライン 2015/05/08

 

■DMMの成長理由とは?

事業があまりに多岐にわたり実態が見えてこないDMMですが、その真相のひとつは成長分野を見極めて参入していることです。もうひとつは成功するのは確率論と割り切り、数多くの新規事業への参入と撤退の時に見せる迅速な経営判断の組合せです。それは他社を寄せ付けない圧倒的な「トライ アンド エラー」の数で成り立っています。

露天商から3000人を率いる従業員グループ企業のトップにいる亀山氏はまるで映画のようなサクセス・ストーリーですが、その行動原理は一貫して変化はないのかもしれません。